マンションの防災(管理組合編)
防災は「自助・共助・公助」が重要であると言われ、災害発生時にはまず「自助」が重要になりますが、その次に期待されるのが「共助」、マンションで言えば基本的には管理組合ということになります。
では、実際に管理組合としてどのように災害に備えればよいのでしょうか。
■共用備蓄
*食料など
水・食料などの備蓄品は「自助」=各住戸で備えてもらうのが基本ですが、ある程度規模の大きなマンションで共用部のスペースに余裕がある場合には、管理組合として最低限用意してもいいかもしれません。(もちろん、全世帯が数日飲食する分を備えるのは困難なので自助の啓発が原則です)
*簡易トイレ
自助で見落としがちなのが「簡易トイレ」。食料品などは意識して備えてなくても多少は冷蔵庫や戸棚にありますが、簡易トイレはしっかりと防災を意識しないと用意がありません。ほとんどのマンションは電動のポンプで水を地下または地上階から上階へ送水しているため、災害時には公共上水道の断水だけでなく停電でも水が止まってしまいます。用意が無く困る人が出てくる可能性が比較的高いため、食料なども備蓄の優先度は高いと言えるでしょう。
*担架、救急セット
広範囲で災害が発生すると、救急隊が被災者を担架で運んでくれるのがいつになるかわかりません。高層階で動けない方などをひとまず共用施設などに移動して応急処置をしたり一時的に過ごせるようしたりするのに、担架があると便利です。
*ヘルメット
これも全員分の用意は難しいですが、地震災害の場合は余震で本震並み、または本震以上に大きい揺れが起こる場合があるため、照明器具や飾り物の下や、タイル外壁の下で作業をする必要がある人の分くらいは用意できると安心です。
*照明器具
なるべく夜間作業がないようにできればよいのですが、災害時の停電下でどうしてもある程度人を集める必要や、自宅住戸に一人でいるのが難しい子どもや高齢者等を共用施設で仮避難させる必要が出てくる可能性があります。そうした際に、少し大きめの照明器具や、余裕があれば投光器などがあると便利です。
*情報コミュニケーションの手段
災害時にはインターネットや電話が使えなくなる可能性がありますし、そもそも居住者全体に周知をする手段は限られています。
情報を住民で共有するため、ホワイトボードや拡声器などがあると理想的です。普段から管理員室等にコピー用紙のストックが十分にあるのであれば、それを掲示板やロビー壁面などに貼る形でもいいかもしれません。
*救助工具
近年のマンションは玄関ドアに地震閉じ込め対策も施されているため工具を使うことになる可能性は決して高くありませんが、室内から出られない方がいた際に、部屋のドアを壊したり、上階や隣接住戸からバルコニーを伝って窓を割って入ったりして救出するといった場面が想定されます。可能性は低くとも、なかなか自宅で用意する人はいないので管理組合備品としては検討の価値があります。
*受水槽の災害対応
ある程度規模のあるマンションでは受水槽でいったん水を貯めてから加圧ポンプで各住戸へ水を送る仕組みですが、受水槽に非常時用の蛇口を設けることで、停電時でも直接給水することができます。
各住戸で蛇口をひねると出てくる水の元の部分ですので、基本的には飲用できる水です。後から工事してつけることもできるので、ない場合は付けておくとよいでしょう。この用意ができれば管理組合としての水の準備はこれに代えられます。
■防災マニュアルの作成
災害発生直後から、管理組合役員はどのように動くのか、どのような非常組織体制にするのか、理事長がいないタイミングだったらどうするのか、発生からの経過時間に応じてどう動くべきかなど、やはり事前に想定しておかないと機能しません。
こうした対策として有効な手段の一つが防災マニュアルの策定です。
マンション向け防災マニュアルはいまや各自治体や地域のマンション管理士会、あるいは管理会社でもノウハウがありますので、相談しやすいところに相談して作成するとよいでしょう。
■防災訓練
マンション全体の防災力を高めるのは、やはり防災訓練を行うのが一番です。
一口に防災訓練といっても、単に放送などを使ってロビーに避難してみましょう、だけだと参加率が悪くマンネリ化してしまいがちです。
近年では管理組合によって様々な工夫をしており、実際に非常ベルを鳴らす、消防署の協力で消防車を呼んだり消火器訓練をしたりする、非常食の試食や実際の調理をする、など単調にならないような努力をしているところもあります。
■名簿の管理
「マンションでの高齢者、いざというとき」の記事でも解説しましたが、管理組合として居住者名簿の管理、特に一人暮らしの高齢者など助けが必要になる可能性が高い人を把握することは重要です。定期的に更新していきましょう。
<おわりに>
大規模な災害時、行政など「公助」が当てになるのは発生から数日経過してからと言われます。
災害が広域になればなるほど、数日経過以後も行政等から十分な支援があるとは限らず、足下の「共助」である管理組合の防災力を高めることがマンション住民にとってとても重要です。