知っておくべきハザードマップの種類(前編)

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自分が住んでいる場所や勤め先などよく行く場所が、災害時にどのような被害を受ける可能性があるのか…
知っておけば、日頃から特にどんな災害に備えればいいのか適切に判断できるようになります。
また、これからマンション購入を控えている方にとっては、マンションのリスク度合いを知っておくことは大変重要です。
今回は、そんな災害リスクを知ることができる「ハザードマップ」について解説します。

【そもそもハザードマップとは】

「ハザードマップ」とは、各種災害時に「どこに」「どの程度の被害が出ると予想されるか」という情報を地図上に落とし込んだものです。
洪水・土砂災害・高潮・津波など各種災害別のハザードマップと、それらの情報を統合した総合的なハザードマップ(名称は各自治体によって若干異なります)があります。
各種災害の被害想定がわかるのはもちろん、避難所等の情報も一緒に記載されているので、あらかじめ見ておくことで災害時に避難の必要性や避難すべき場所・ルートを的確に判断できるようにになります。
では、次に各種災害別のハザードマップの中身について解説していきます。

【洪水ハザードマップ】

正確には「洪水浸水想定区域図」という、河川が豪雨等で氾濫した場合に浸水が想定される区域を表したものに洪水予報等の伝達方法、避難場所等を記載したものを「洪水ハザードマップ」といいます。
近年、いわゆるゲリラ豪雨や線状降水帯による水害が増えており、「水害の後に検証した結果、ほぼハザードマップ通りに被害が発生していたことがわかった」という事例が多々あるほど、重要性が高まっています。
洪水浸水想定区域図には降雨の想定量別に2種類が存在します。

①計画規模降雨

「河川整備の目標とする降雨」であり、一級河川(利根川・荒川や信濃川・淀川などかなり大きな川)では100~200年に一回程度の確率、その他の河川では30~100年に一度の確率程度の降雨被害を想定しています。

②想定最大規模降雨

「想定しうる最大規模の降雨」であり、約1,000年に一回程度の降雨被害を想定しています。1,000年に1度と言うと確率が低すぎて楽観視しすぎてしまいそうですが、記憶に新しい2020年の熊本県球磨川流域の豪雨災害はまさに1,000年に1度級と言われる災害でした。不安視しすぎなくてもよい水準ではありますが、万が一のことは考えておかなければなりません。
また、浸水想定の図には「0.5m~1.0m」といったように浸水の深さ想定ごとに色分けがされている「浸水深」のマップと、「24時間以上72時間未満」といったように50cm以上の浸水がどの程度継続する想定かの「浸水継続時間」の図にも分かれます。
前者は一時的にでも浸水被害を受けるかどうかの判断に役立つので、マンションであればとりあえず共用廊下でもいいので上の階にどの程度の高さ避難すればいいかの目安になります(これを「垂直避難」といいます)。
後者はさらに水平避難(一時的に高いところに避難するだけでなく、別の場所に一定期間避難すること)の必要性や、会社であれば事業の継続性への影響を考える上で参考になります。
これらの組み合わせで、「計画規模の浸水深についての図面」「想定最大規模の浸水深についての図面」「想定最大規模の浸水継続時間についての図面」といったように図面の種類が分かれます。
一般にマンション購入時に不動産業者から説明を受けるのは、「想定最大規模の浸水深についての図面」であることがほとんどでしょう。

【内水ハザードマップ】

「内水(雨水出水)」とは、原因が降雨であることは洪水と同じですが、河川ではなく下水道管や水路があふれて浸水被害が発生することです。
マンホールや雨水ますなどから水があふれてくることになりますので、河川が近くになくても浸水被害を受ける可能性があります。
単純に下水道等の処理能力を超える「氾濫型」と、下水道等が最終的に排水する先である河川が増水したことにより排水できなくなったり河川の水が逆流したりすることで発生する「湛水(たんすい)型」があります。
近年の代表的な内水氾濫の例は、2019年の武蔵小杉エリアでの被害でしょう。タワーマンションが機能不全に陥る衝撃的な映像が記憶に残っている人も多いのではないでしょうか。
内水氾濫はアスファルト舗装などにより浸透する場所が少ない都市部で起こりやすい水害であり、平成20~29年の10年間に起こった水害の被害額では全国で見ると洪水氾濫が約6割・内水氾濫が約4割なのに対し、東京都では約7割が内水氾濫による被害となっています。
ただし、起こりやすい場所は平野の中でも特に低い場所、地面の多くが舗装されている場所などの特徴はありますが、正確な予測を立てるための情報を集めにくいなどの理由から、内水ハザードマップの整備はさほど進んでいません。
国土交通省によると令和3年3月時点で内水ハザードマップの公表をしている自治体は4割にも達していないのが現状です。
(後編へ続く)