大規模修繕工事の内容(後編)

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大規模修繕工事の内容(前編)」の内容に引き続き、マンション大規模修繕工事の具体的な内容について、国土交通省のガイドラインで想定している内容に沿って解説していきます。

【外壁塗装等】

外壁の塗装またはタイルの貼り替え等です。
■躯体(くたい)コンクリート補修
建物の構造の主たる部分である、コンクリートの補修です。コンクリートは頑丈とはいえ経年によって水分量の変化などによるひび割れや欠損、内部の鉄筋のサビの影響による爆裂などが生じてきますので、そうした部分の補修を行います。
■外壁・軒天塗装
外壁や手すり壁(共用廊下や階段等の手すり代わりの壁)、バルコニーや共用廊下の天井部分(軒天)について、洗浄・下地の処理をした上で塗装しなおします。20年以上経過している場合には、既存の塗装が劣化していて躯体保護の機能が果たせない可能性があるため、いったん既存の塗装を除去するやり方も想定されています。
■タイル貼補修
外壁については、高級感や耐久性の面から塗装ではなくタイル貼りにしているマンションがかなりあります。しかし、経年劣化によって剥落の恐れがあり、最悪の場合剥落したタイルによって人や財物に危害を加えてしまう可能性があるため、大規模修繕工事の際に剥がれたところや浮いて剥がれる可能性がある部分を補修します。この工事の難しいところは、「補修が必要なタイル部分」がどの程度になるのか足場をかけて実際に調査するまではっきりとはわからないという点です。ある程度調査可能な範囲から推測するものの、見積もり段階の費用からかなりずれてしまうこともあります。なお、最近ではドローンと赤外線を組み合わせることで調査の正確性を高める手法も増えています。
■シーリング
窓のサッシと躯体部分とのつなぎ目や、タイルの目地、コンクリート同士の間の部分など、よく見るとゴムのような素材で埋められています。これは、隙間ができる部分を埋めて防水性・機密性を持たせるためのものですが、長期間持つ素材ではないので基本的には大規模修繕工事の際に全て打ち替えます。    「コーキング」という言い方もします。

【鉄部塗装等】

■鉄部塗装
鉄(鋼)でできている部分の塗装です。手すり、鉄骨階段、フェンス、共用部分ドア、メーターボックス等の扉などが該当し、「雨掛かり部分(日常的に雨がかかる部分)」と「非雨掛かり部分」で劣化スピード(錆びやすさ)が異なるので場所によって修繕周期を変えることがよくあります。基本的には大規模修繕工事のように10年以上も待たず修繕することが一般的であり、4~6年周期で1、2回実施し、大規模修繕工事で改めて実施する、というやり方が多い工事です。
■非鉄部塗装
アルミやステンレス、樹脂などでできている部分の塗装です。サッシや面格子、避難ハッチ、雨樋、隔て板などが該当します。アルミやステンレスは塗料が定着しづらく、以前は「塗装できないので交換するしかない」と言われることも多かったのですが、最近では対応した塗料も出てきています。ただし、費用がかさむ可能性もあるので費用対効果での検討となるでしょう。

【建具・金物等】

■建具関係
共用部のドアや、住戸の玄関ドア(一般に鍵以外は共用部分扱い)、窓サッシなどです。1回目の大規模修繕工事で本格的にここを工事することはないと思いますが、2~3回目の大規模修繕工事となる30年超時点では取り替えることがあります。
■金物類
集合郵便受け、避難ハッチ、隔て板、物干しなど。これも1回目の大規模修繕工事で扱うことはあまりなく、2回目以降のタイミングで交換工事が検討事項となるでしょう。

【共用内部】

■共用内部
管理員室内部や、集会室をはじめ各共用施設部屋内、エントランスホールなどの張替・塗替等工事です。大規模修繕工事と切り離して行っても支障ない項目ですが、一括で行うことでコストダウンが期待できます。

【まとめ】

大規模修繕工事について、内容のイメージはつかめましたでしょうか。
つい専門的なことだからと理解を諦めそうになってしまうことですが、きちんと必要性について理解した上で進めることが、住民全体の合意形成をまとめていくのに大事になってきます。
細かいことまで覚える必要はありませんが、ぜひ全体像を把握しておきましょう。