長期修繕計画と大規模修繕工事

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マンションにお住まいの方なら必ず耳にする「長期修繕計画」と「大規模修繕工事」。
なんとなくは知っていても、工事のことはわからないからと内容をしっかりと理解するのを諦めていませんか?
マンションにとって宿命とも言える修繕にまつわる解説をしていきます。

【大規模修繕工事とは】

マンションの躯体(くたい)、つまり本体部分については一般的に鉄筋コンクリート(Reinforced concrete=RC)造、または稀に大型マンションなどでは鉄骨を加えた鉄骨鉄筋コンクリート造(Steel Reinforced Concrete=SRC)造でできています。
コンクリート等は丈夫なので、基本的には数十年~百年程度持つとされています(ある程度ケアは必要)。
しかし、マンションはコンクリート以外にも外壁のタイルや、塗装してある部分、鉄などの金属部分、細かいところでは窓枠と躯体の間を埋めているゴムのような部分など、様々な材質でできています。
当然これらはコンクリート並みの寿命があるわけではなく、それぞれ異なった寿命があります。
通常、軽微で部分的な不具合であったり、簡単に立ち入れる場所であれば個別に修繕を行います。
しかし、地上や廊下などからは作業できない外壁については、そうそう簡単にはできません。
十数年に一度、少なくとも外壁に関して足場を組んだりゴンドラを使ったりする大がかりな修繕工事が必要となります。
その際に、必須ではないものの他の箇所でそろそろ修繕したほうが良いタイミングである工事をまとめてしまい、一括で様々な箇所の工事を行うのが一般的です。
そうすることで、工事費用の総額を抑えられたり、住民が受ける工事の影響が短期間で済むと言ったメリットがあります。
結果的に、「十数年に一度、外壁をはじめ様々な箇所の修繕工事を行う」のが大規模修繕工事の基本的なイメージです。

【長期修繕計画とは】

大規模修繕工事を行うには当然ながらその規模から多額の費用を要します。
その額は十数戸の小規模マンションでも数千万円になり、大規模マンションやタワーマンションでは10億・20億円といったレベルです。
その費用があるとき突然必要だということになってしまうと、住民としては大変困ってしまいますよね。
そこで、文字通り長期にわたって修繕工事の計画を立てておこう、というのが「長期修繕計画」です。
「長期」というのは具体的には25年~30年、またはそれ以上の期間を指します。
やや古いマンションでは25年計画で作成することがよくあったのですが、現在では大規模修繕工事が確実に2回含まれる周期、またエレベーターの交換時期などの観点から30年以上の期間で作られるのが一般的です。
では、どのように修繕工事の目安を設けるのでしょうか。
外壁や塗装、金属部分など部材ごと、または機械設備ごとに、これまでの事例・研究蓄積などから耐用年数の目安がわかっています。
例えば、国土交通省が作成している長期修繕計画ガイドラインでは、修繕周期の例として「屋上防水工事は12~15年」「鉄部塗装(雨がかかる部分)は5~7年」といった具合です。
(性能のいい部材や進化した技術による工法などにより、修繕周期をもっと長く見ていい場合があるので、一概には言えません。)
こうした周期の目安と設計図書などから得た数量の情報によって、各項目ごとに周期と費用の目算を立て、全項目で合わせて表を作成し、「何年目にはこの程度工事費用が必要」「12年目には大規模修繕工事が必要なので一気にこの程度費用が出る」といったことがわかるようにし、さらにそこから「この支出に間に合わせるにはこれだけの修繕積立金が必要」と計画にしたものが長期修繕計画です。
≪画像:長計項目別≫
≪長計収支計画グラフ≫
ただし、よくある勘違いなのですが、ここで立てた周期や費用はあくまでも最終的に適切な修繕積立金を設定するための目安です。
必ずその周期でやらなければいけないというものではありませんし、費用も相場の変動や劣化状況などによって上下する、正確性が担保されたものでは全くありません。
特に、昨今の各方面の値上げラッシュの中では、もはや既存の長期修繕計画上の工事費用は当てにならないでしょう。
そのため、5年程度を目途に計画の見直しが必要とされています。

【まとめ】

大規模修繕工事・長期修繕計画は所有者にとって大変大事なものでありながら、どうせわからないと諦めて敬遠されがちです。
しかし、基本的な内容はそこまで専門的なものではないので、自分たちの住まい・将来の資金計画について、きちんと理解していきましょう。
参考・画像引用:国土交通省 長期修繕計画標準様式、長期修繕計画作成ガイドライン・同コメント
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001600130.pdf