知っておくべきハザードマップの種類(後編)
前回の記事に引き続き、様々なハザードマップの種類の解説をしていきます。
【津波】
同じ水害でも、洪水ハザードマップに比べるとシンプルに「想定の最大規模の浸水被害(高さ)」のみ作成されている自治体が多く、その際の避難場所も記載されています。
2011年の東日本大震災で認識されたとおり、津波が発生したらとにかく避難することが重要です。
ただし、避難に適している場所とされているのは「3階建以上の鉄筋コンクリート造等の頑丈な建物」ですので、ほとんどの場合が鉄筋コンクリート造であるマンションにお住まいの方は、下手に周辺の公共施設等に逃げようとする必要はありません。
前回の記事でもご紹介した「垂直避難」の考え方で、共用廊下等で構わないのでとにかく上にすぐ一時避難することが重要です。
1階あたりの高さは約3m程度であることが多いので、ハザードマップを確認して例えば浸水想定が3m程度までの範囲であれば、2~3階以上にひとまず避難すれば一次的な被害は避けられる可能性が高いということになります。
【高潮】
同じ海の水害なので津波と混同されやすいのですが、「高潮」とは台風等に伴い低気圧で海面が吸い上げられるのと同時に強風によって海水が海岸に吹き寄せられることで、海面の上昇を起こして浸水被害をもたらします。
幸い、原因が台風等であることから津波と異なり事前の予測がしやすいため、ハザードマップ上で高潮浸水のリスクが想定されている場所であれば、台風情報等をチェックすることで前もって準備・対応が可能です。
【土砂災害】
山やがけがくずれたり、くずれた土砂が雨水や川の水と混じって流れてきたりする災害で、大雨や地震によって発生します。
近年で最も社会的なインパクトがあった土砂災害として、2021年の熱海市で発生した土石流災害や2018年の北海道胆振(いぶり)東部地震での広範囲に渡る土砂崩れが印象に残っている方も多いでしょう。
ただ、逆にその印象から山間部のイメージが強くなり、住宅地でのリスクを軽視している方もいらっしゃるかも知れません。
しかし都内23区内ですら小規模ながら近年でもがけ崩れの事例はあり、小規模といえど巻き込まれれば人命に関わるリスクです。
山間部等だけでなく、六本木や高輪といった一等地にも「急傾斜地崩壊」のリスクが想定されています。
ハザードマップでは、その危険度から「レッドゾーン」と「イエローゾーン」に色分けされています。
<レッドゾーン>
土砂災害発生時に、建物の損害や住民等の生命又は身体に著しい危害が生じるおそれがある、とされている区域です。
危険度が高いため、開発行為や建築物に対しての規制も生じます。
<イエローゾーン>
レッドゾーンほどではありませんが、住民等の生命又は身体に危害が生じるおそれがある、とされている区域です。
【地震】
地震に関するハザードマップはいくつか種類があるのですが、代表的なものは震度(揺れやすさ)と液状化に関するものです。
<震度(揺れやすさ>
同じ強さの地震動が伝わってきた場合の揺れやすさ、または将来的に発生する可能性のある具体的な地震を想定した際の震度分布を表したものです。
一見して違いがわかりにくい近接した地域でも、地表地盤の状況(厚さや質)によって揺れやすさが変わるため、「それほど離れていない場所で被害に差が出た」ということが起こり得ます。
<液状化>
液状化現象とは、地震発生時に地盤が液体のようになってしまう現象で、特に戸建て住宅が被害を受けやすいほか、道路の変形や上下水道・ガス・電気といったライフラインに大打撃を与える可能性があります。
よく知られているように埋め立て地で発生しやすいため、東日本大震災の際には千葉県浦安市で大きな被害がでました。
また、内陸だからといって安心できるわけではありません。田んぼを埋め立てたような土地でも発生するリスクが高く、埼玉県久喜市でも同震災の際に液状化現象の被害を受けました。
<その他>
他にも、自治体によっては「建物倒壊危険度(建物倒壊の危険性)」「火災危険度(火災発生による延焼の危険性)」などの地震に関するハザードマップを作成しているところもあります。
【おわりに】
近年、ハザードマップ通りに災害の被害が出るケースがしばしば見られ、注目度が高まっています。
これから住宅を購入される方は判断材料の一つに、既に購入されている方も、どのようなリスクを想定すればいいのかという準備・対策にきっと役立ちます。